近江商人に「三方良し」という考え方があります。
 売り手よし
 買い手よし
 世間よし

「売り手の都合だけで商いするのではなく、お客さまを心の底から満足させ、さらに商いを通じて社会の発展に貢献せよ」という教えです。

「マーケティング」という言葉が先行し、セオリーや小手先のテクニックが先行する時代の中で、とても象徴的なエピソードがありました。

「カトリーナ」と名付けられた超巨大なな台風がフロリダに上陸し、街が大洪水で水浸しになってしまいました。
CNNを見ていると、カトリーナ台風の被害が次々とレポートされます。見渡す限りの家は泥水に浸かっていました。

「普段は1ドルで変える水が現地では10ドルで販売されています。」

ニュースキャスターは、ゲストに呼ばれた高名な経済学者に質問します。
「10倍もの値段で売るのはいかがなものでしょう?」

すると、高名な経済学者は答えました。
「これこそが経済原理です。手に入りにくい水が普段の10倍で売られる。それはごく自然な現象です。」

その数ヶ月後、東日本大震災がありました。
ニュースのインタビューで、
「自動販売機が地震を感知し、無料で飲料が出るようになった!」
「飲み物が無料で出てくるなんて!本当に助かりました。ありがとうございます!」
そんな報道がありました。

緊急事態が起きた時に、
 米国は「自然の原理」といい
 日本は「ありがとう」という

三方よしの精神とは、
 売り手よし
 買い手よし
 世間よし
そんな「三方良し」の精神が、多くの人のお役に立ったエピソードです。

ちなみに、その時に紹介されたのがサントリーの自動販売機だったので、一気にサントリーのファンになりました。

人の心を打つような姿勢を、人は決して見逃さないものです。
「自らもそのような人間でありたい」
そう決意したエピソードでした。